大先生は門人を呼ばれ、「今度入門した野川君と冨田君です、こちらの方は杖術の達人の伊坪さんです・・・」、と話されました。伊坪さんは、「君らは体術でしょう、今度稽古しましょう」と云うと戻って杖を振り始めました。当時の伊坪さんは会社帰りに道場に来られ、杖の一人稽古を力強く行うとさっと帰られました。
1980年代の体術の稽古で思い出に残るシーンがあります。天之巻中段之位の丸身の三本目です。この技は仕手が右手で受手の右手首を捕ります。受手は左足を斜め後に引くと同時に右手首を時計回りで立てます。引いた左足を肩の付け根方向に出し肘を押さえ右手首を掴み返し後ろへ引き倒すのです。さらに、右手首を極めて終わります。肩関節、肘関節、手首関節にダメージが残る技です。伊坪さんの掛ける技は、速く引き、速く出し、速く引き落とす、一連の動きが強烈な技でした。仕手の私の手首、肘、肩各関節は極まったのです。
また、2010年代に伊坪さんと稽古をしていた謙久も同じ経験をしたそうです。変わらぬ「極まり技」が世代を超えて出現したのです。この稽古で受身は格段に上手くなりました。
相久 令和五年八月
松道流 護身武道 松栄館
当流HPをご覧いただき、ありがとうございます。 当流は昭和18年、旧水戸藩士・武石謙太郎兼相居士の弟子・松本貢兼久が無比流、浅山一伝流、兼相流等諸術を総じて創設しました。身体操法の振り返りにより、日本古来のエッセンスを身につけ、実生活での向上を目指しています。
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